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鬼平犯科帳 '69 第二十六話

井筒屋おもん

Photo監督: 土井通芳  原作: 池波正太郎  脚本: 安倍徹郎

出演: 松本幸四郎 (長谷川平蔵) 堺左千夫 (伊三次) 池田駿介 (山田市太郎) 北川陽一郎 (山崎国之進) 小鹿敦 (小柳安次郎)

ゲスト: 川合伸旺 (井筒屋徳兵衛) 水上竜子 (おもん) 桑山正一 (近藤市五郎) 松原光二 (宗次郎) 福山象三 (松蔵) 大塚榮 (源太) 小笠原優悦 (芳松) 帆立敏 (安吉) お民

_2【ものがたり】 寺の石段を登って行く、平蔵と伊三次。脇に粗末な小屋があり、そこから出て来た浪人者がいた。伊三次が寺の者から聞いた話では、名を近藤市五郎(桑山正一)と言い、上方のちょいとした御大家の次男坊で、小屋には足掛け三年ほど住んでいると言う。三年前から辻斬りが横行し始めたのと合致し、話の辻褄が合うと言う事であった。

Photo_2 浪人者は小屋を出、竹藪の中へ入って行き、そそり立つ竹を鮮やかに斬り倒した。伊三次は、「毎朝、これをやるもんですから、竹だって堪ったもんじゃありませんや」と言うと、平蔵はその切り口を見て「見事だ! 一の太刀で左へ跳ね上げ、返す刀で右へ斬り落とす。大竹をこのように斬り落とすには、並大抵の修行では叶わぬ」と言った。伊三次は「返す刀で右を……」と。「覚えがあろう」と平蔵に言われ、「確か、四谷の権の助坂で」と合点がいったようであった。「すれ違いざまに二人を斃した。あの腕の凄さには、舌を巻いたもんだ。奴なら出来る」と言った。

 その夜、火盗改メ役宅で「そんなに凄い奴なんですか」と同心・小柳安次郎(小鹿敦(現、小鹿番))が平蔵に言い、「お前には、適うまいなぁ」と言われ、「拙者、いささか居合いの心得があります」と反論している。「いささか、とはどれ位だ」「道場に半年ばかり」と言うと、平蔵は笑いながら「もう良い」と話の腰を折ってしまった。そして「成ろう事なら、相手に六尺以上近寄らぬ事だ。ただし、如何なる場合も、決して目を離してはならぬ。お前の首と胴が離れぬようにな……」と浪人者・近藤の見張りを申しつけた。

Photo_3 翌日、小柳は寺の石段に腰掛け、飯を食っていると、石段を上がって来るヤクザ風の男、松蔵(福山象三)がいた。男は小屋に入ると、「そろそろ金が無くなった頃だと思ってねぇ。前金は三十両だ。残り七十両は仕事が終わってからだ」と殺しの依頼にやって来たのである。「ひとつ、骨折りだが、また頼むよ」と男が言うと、近藤はあっさりと「嫌だね」と素気なく断ってしまった。「あんたの悪い癖だ。仕事の前っていうと、必ずそうやって駄々を捏ねるんだ」と苦い顔をしている。「俺はお前の手下じゃねぇ。お断りだ」と言うと、「ふんっ、あんた怖くなったね? 鬼平の手下が下で見張ってるぜ。俺の仲間が奴を見知っているんだ」と指を指した。

Photo_9 飯を食い終わった小柳が立ち上がり振り向くと、石段の上から浪人者と男がこちらを見ているのに気がつき、驚いて逃げ出した。男は、「やっぱり無理だろうねぇ」と伊言うと、近藤は「ふんっ、鬼が怖くて人殺しが出来るか」と言った。

Photo_10 その帰り、男はお店の丁稚を連れた旦那風の男・井筒屋徳兵衛(川合伸旺)に声を掛けた。「旦那、お久しぶりで……」と言われた徳兵衛は丁稚を先に帰し、「本当に久し振りだ。立ち話も何ですから、そこらで一寸……」と二人して料理屋へ行き、話は十三年前に飛んだ。

Photo_11 男と女が寝間で銭勘定をしている所へ、徳兵衛と松蔵が押し入り、男を刺し殺して金を強奪した。殺された男は盗人の頭であったが、万助という男が二人を唆し、情婦の“お民”も自分の情婦とし、盗人の頭の跡目を継いだ。盗人が盗人の上前を跳ねたという話を蒸し返していたのである。そこで話に出たのが松浦町の小間物屋“井筒屋”であった。松蔵が井筒屋の女将“おもん”(水上竜子)から殺しを請け負ったと言うのである。小間物屋に縁はない、と言った徳兵衛であったが、この徳兵衛こそが今の小間物屋“井筒屋”の主人であった。

Photo_12 店に帰った徳兵衛は、番頭の“宗次郎”(松原光二)に女房の“おもん”の様子を聞き、帳簿を揃えさせ奥の座敷で金勘定をすると、丁度三十両足りないと、気づいた。松蔵の話は本当だった、何故おもんは私を殺そうとするのだ、と徳兵衛は考えた。おもんを抱きながら「畜生、この女。どうするか覚えていろ」と、腸が煮えたぎる思いであった。

Photo_13 小柳は今日も近藤を尾けている。賑わう境内の縁日で近藤は縁台将棋をしていた。そこへ小柳が「その手はまずい」と横から口を挟んでしまった。将棋の相手をしているうち、変装している自分を忘れたのか、自分を“拙者”と武士言葉になっている。将棋にも負け、役宅に戻った小柳は平蔵から「負けたのは将棋だけではあるまい」と茶化される。本来ならば人の上に立ち、剣の道も極めたであろう近藤の生き様が不憫に思えて来た平蔵であった。小柳は「別れる際に、「近く番外で勝負を決しよう」、と申しました。これは、近く人を斬るという謎かけのように思われます」と述べると、「奴が、そんな事を言ったのか。何故それを早く言わぬ」と叱責を被ってしまった。翌日から、同心・山田市太郎も近藤市五郎の見張り役として小柳と同道する事になる。

Photo_7 翌日、井筒屋の前に現れた近藤を小柳と山田が尾けている。井筒屋では、丁稚が番頭の宗次郎に「手水場(ちょうずば)に行けないんです。だって、旦那さんと女将さんが昼間っから障子も開けっ放しで……」と小便を我慢している。徳兵衛はおもんに「さぁ、そろそろ出かけないと。寄り合いで酒になるから、夜まで帰れないよ」と言っている。が、徳兵衛は「今日こそ、化けの皮を引ん剥いてやる……」と決心していた。何食わぬ顔で店を出て、裏口から店に入り、天井裏へ侵入した。そこで見たものは、おもんと番頭の宗次郎の痴態であった。しかも、おもんは「今日だよ、今日だ。もう帰ってこないよ。今から行って頼んでくる。もう二度と、あいつの顔を見なくて済むんだよ。これで、井筒屋もお前も私の物になるんだ」と、二人きりだと思うので本音を呟いていた。その後、お寺参りに行ってくる、とおもんは店を出た。

Photo_15 おもんの足が止まった。向こうからやって来たのは、寄り合いで遅くなる、と言っていた徳兵衛であった。大変な事を忘れていた、お得意様を訪問するから、と言って店に帰った。高価な小間物を品定めし、今日は番頭を連れて行く、と言うのであった。宗次郎に荷を担がせ徳兵衛は出て行った。今度は、駕籠を呼んでおもんはそれに乗って出て行き、根津権現様の門前で駕籠を降りた。そして安吉(帆立敏)という男と会い、「頼むよ、安さん」と話しかける。安吉は「この間の話かい?」と返答した。「やっと出かけたんだけどさぁ、殺るなら今なんだけど……」「やけに、急くじゃねぇか」というやり取りをしている。こうして、二人、三人と仲介者と繋ぎを取り、松蔵が近藤に依頼した。近藤は「井筒屋徳兵衛は、どんや奴なんだ」と聞くと、松蔵は「嫌だなぁ、下見の時間はたっぷりあったじゃありませんか」と言う。「あいつ、なかなか顔を見せやがらねぇ。もしかしたら、気づいてるんじゃねぇか」と言う。「気づいてたら、赤坂まで出かけていく筈がねぇじゃありませんか」と近藤を促した。

 近藤は番傘を担いで小屋から出て行った。その後を火盗改メの山田と小柳の二同心が尾ける。近藤は尾けられるのが面倒だ、とばかりに突然他人の屋敷に入って行き、中間に呼び止められる度に「ただ通るだけだ、邪魔するな」と当て身を食らわして通った。他人の屋敷に勝手に入るなどという無作法が出来ない火盗改メの同心は、ただオロオロするだけであった。

Photo_16 近藤は、赤坂の佐々木某の勝手口で井筒屋徳兵衛が出て来るのを番傘を差しながら待っていた。やがて“井筒屋”と名入りの番傘を差して雨合羽を着た徳兵衛と荷を背負った宗次郎が出て来た。徳兵衛は自分の命が狙われている事は先刻知っているので、胡散臭い浪人者が番傘を差して用水桶の脇に立っているのを発見し、身構えた。雨宿りのつもりか、うなぎ屋“春木屋”の二階座敷から、つけ狙う浪人者の所在を確認している。と、浪人者は真下に居て、姿を隠す風もなかった。この男、いつの場合でも己の姿を隠すという事がないのだ。徳兵衛は、宗次郎に酒を勧め、優しい言葉を掛けている。だが、徳兵衛には一つの思惑があったのである。

Photo_18 佐々木某の屋敷で新規の客を紹介された、親戚で浅井某という旗本の屋敷に出向きたい、と言い出した。徳兵衛は急に思いついたように、「どうだろう、お前が主人であたしが番頭ということにして出かけてみよう」と突拍子のないことを言い出すのであった。お互いの着衣を換え、うなぎ屋を出る時には、宗次郎が雨合羽を着て番傘を差し、徳兵衛が荷を担いで、主従逆の身なりになった。夜目にはどちらとも判別がつかない。こうして近藤の目を眩ませたのである。徳兵衛は宗次郎が息絶えているのを確かめてから、「辻斬りだ、人殺し」と叫んだ。それを見たのは密偵の・伊三次であった。そして、まんまと邪魔な宗次郎を斬らせ、自分は逃げ延びて店に帰った。店には、おもんと安吉がいた。「それにしても、随分と遅いねぇ」「なぁに、今頃は仏様だあね」と言っている所へ、徳兵衛だけが帰って来た。「大変な事が起きた。番頭の宗次郎が斬られたんだ」と聞いた瞬間、おもんの血の気は失せた。徳兵衛の後から戸板に乗せられた宗次郎の死骸が続いて店に入って来た。おもんは死骸に駆け寄り、「宗次郎、宗次郎……」と泣き叫びながら抱きついている。徳兵衛は、それを見て「畜生、このアマ。ざまぁみやがれ」とほくそ笑んでいた。
 
 火盗改メの役宅では、「二人も見張りに付けて、何たる失態だ」と平蔵は激怒している。そこへ伊三次が「近藤が殺りました。井筒屋の番頭がたった今斬られました」と報告に現れた。

 井筒屋では通夜の席で、「あたしが、つまらない事をしてしまった為に番頭の宗次郎がこんな目に遭ってしまいました」と通夜の客に言い訳している。おもんは遺骸の前から立ち、去って行く後ろ姿に、「これで少しは堪えただろう。女の浅知恵でこのあたしに立ち向かうなんて、あたしを甘く見るとこうなるんだ」という思いをおもんに投げかけている。和尚がやって来て、経をを読み出す所へ丁稚が走り込んで来、「女将さんが、女将さんが、台所で……」と要領を得ない。おもんは台所で出刃包丁で自害していたのである。

Photo_19 早朝、近藤は酒瓶を片手に泥酔状態で小屋へ帰って来た。そこに待っていたのは松蔵である。「あんた、仕事をやり損なったそうだねぇ」と言った。「確かに殺った。殺ったからこうして酒を飲んだ。酒でも飲まなきゃこんな事やってられねぇ」という近藤に、「あんたが殺ったのは番頭の方で、旦那はまだピンピンしてるって云うぜ」と言われた。「これから井筒屋の後家からは、たんまり搾り取れるんだ。また殺ってもらうぜ」と言われ、「俺はもう使いもんにならねぇ。殺った後、空っぽになっちまうんだ。勘弁しろ」と言うが、「冗談じゃねぇ。俺の仲間が黙っちゃいねえぜ」と脅すと、「俺が今一番殺りてぇのは、松蔵お前だ!」と言ったかと思うと、一刀のもとに斬殺してしまった。そこへ平蔵、山田、小柳が「火盗改メだ。神妙にいたせ」と現れた。一騎打ちになるが、勝負はただの一太刀で決した。

Photo_20 平蔵は、近藤が何故番頭を斬ったのか、同じ夜に女将のおもんが自害を遂げたのか、腑に落ちぬと呟き、「これは井筒屋を調べてみる必要がありそうだ」と判断していた。

 井筒屋徳兵衛が火盗改役所の長谷川平蔵に直々に申し述べたい儀があるとやって来たと同心・山崎が告げた。即刻庭先に呼ばれた徳兵衛は、為す術もなくそこへ跪くしかなかった。

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