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鬼平犯科帳 '69 第二十八話

縄張り

Pdvd_028監督: 小野田嘉幹  原作: 池波正太郎  脚本: 早坂暁

出演: 松本幸四郎 (長谷川平蔵) 竜崎勝 (酒井祐助) 古今亭志ん朝 (木村忠吾) 市川五百蔵 (竹内孫四郎) 池田駿介 (山田市太郎) 北川陽一郎 (山崎国之進)

ゲスト: 宮口精二 (芝の治兵衛) 船戸順 (岩渕の又蔵) 加賀邦男 (羽沢の嘉兵衛) 上田忠好 (鹿渡の島之助) 高角宏暁 (船戸の権) 富田仲次郎 (追分の重八) 松下砂稚子 (お才) 幸田宗丸 (向嶋の徳平) 松本染升 (三の松の平十) 今福正雄 (黒谷の勘五郎) 鵜沢秀行 (打上げの仙太郎) 吉野敬子 (おみね)

Pdvd_030【ものがたり】 本郷と下谷が縄張りの“三の松の平十”(松本染升)の家。平十が心臓を脇差しで貫かれたまま死んでいる。その傍らで女房のお才(松下砂稚子)が寝間着のまま呆然と座っていた。鹿渡の島之助(上田忠好)が「女将さん、来ました」と一言お才に告げた。黒谷の勘五郎(今福正雄)が火盗改の長谷川平蔵以下、同心・酒井、竹内、木村を案内して部屋へ入って来た。お才は「平十の女房、お才と申します。お役目ご苦労様でございます」と挨拶した。

Photo 「お前、亭主が殺された時、隣りで寝ていたのだな」と平蔵が尋ねた。お才は「はい。でもすっかり寝込んでおりまして……」と言う。平蔵は「気がつかなかった……」その時、酒井が「獲物は脇差し。背中より心の蔵を正確に一突き。これでは声を上げる間も無かったでしょう。玄人の仕事です」と告げた。平蔵は「おい、死体を上げろ。畳ごとだ」と命ずると、平十の若い衆が畳を上げようとすると、平蔵は押しとどめた。床板を外し、そこへ酒井が入った。庭先から寝所まで抜けられたのであった。平十の死骸から酒井が脇差しを抜き、「備前、二尺物」と言った。お才に平十の目を閉じてやれ、と命じたところへ、子分の岩渕の又蔵(船戸順)が入って来た。

Photo_2 平蔵は帰り際、子分の勘五郎に「平十はいくつだ」と聞くと、勘五郎は「五十……」と口ごもるところへ脇にいた子分の島之助が「五十三で」と口を挟んだ。「長生きだな。本郷、下谷界隈でこれだけの縄張りを張るには、これまで随分と無理な血を流したであろう。違うか」と平蔵。言われた勘五郎と島之助は嫌な顔をした。そこへ同心の山田が血相を変えて駆け込んで来た。「場所はどこだ!」という平蔵に「広小路で」というと、火盗改の一同は平十の玄関から走り出た。

 女が一人、同じように殺されていた。下女に問いただすと、女は三の松の平十の囲われ者だという。布団を剥いだ平蔵は女の腹に手を当て「子持ちだ」と言い、「生まれていれば、平十の二代目……。この物取りの狙いは平十の縄張りさ」と言った。

Photo_3 平十の葬儀が営まれた。酒井と木村が見張っている。その前を王子・巣鴨一帯でのし上がって来た元締め“追分の重八”(富田仲次郎)と黒谷の勘五郎、大物と言われる羽沢の嘉兵衛(加賀邦男)と鹿渡の島之助がそれぞれ連れ立って本堂へ向かった。羽沢の嘉兵衛は仏面だが奴の指図一つで千人の子分が動くそうだ、と酒井が言っている。本堂に集まったお歴々にお才が礼を述べると、向嶋の徳平(幸田宗丸)から跡目の話が出た。お才は「この正月に、平十は岩渕の又蔵に跡目を継がせると申しておりました」とPhoto_17言うと、後に控えていた又蔵が「女将さん、いけません。あれは酒が入った席での話です。酒の上での座興です、どうぞお聞き捨てください」とお歴々を前に言う。正月の席で、思ったより長生きしたと言う平十は「俺の縄張りは血の池みてぇなもんだからなぁ。俺が殺られた後は、おめえは女だから、決して縄張りに執着しちゃいけねえ。すぐ身を離して国へ帰れ」と言い、「跡目は又蔵どんに継いでもれぇてえんだ」と言った途端、勘五郎と島之助の顔つきが変わった。平十の子分になってまだ三年だが、平十は又蔵を高く評価していたのである。黒谷の勘五郎、鹿渡の島之助も同席しており、跡目の事は分かっていたのであるが、それぞれに思惑があり、それぞれに紐が付いていたのであった。

Photo_5 向嶋の徳平が、「平十どんがそこまで言ったんなら、決まりじゃねえか。今はおめえさんの都合を聞いている訳じゃねえんだぜ。一日だって縄張りを空けちゃいられねえんだ」と言うと、横から羽沢の嘉兵衛が「そりゃ良いが、芝の治兵衛(宮口精二)元締め抜きじゃこの話は決められねえよ」と言うと、追分の重八も「生憎、一昨日から箱根へ湯治に出ていなさるんだそうだ」と言った。徳平は「こPhoto_10の大事な時に……」と苦い顔をする。嘉兵衛は「箱根へは、すぐこちらから使いを出そう。出来るだけ早く帰ってもらって、それで三の松のシマの決まりをつけよう。皆さんそれで良いね」と言った。お才は「シマの事は元締めさんたちにお任せ致します。あたしは、平十の言う通り、早速明日にでも国に帰ります。それがあの人の言い置きでございますから」と言った。

 平蔵は酒井の報告を聞き、「ほおっ、あの女、国に帰るのか」「はい。岩渕の又蔵が三河まで送って行くそうでございます」と答えた。平蔵は「あの女、利口者だな」と呟いた。

 又蔵はお才に別れの挨拶をしている。お才は「何度も言うようだけど、又蔵さんは江戸には帰らない方が良いと思うよ。面倒な事に巻き込まれないようにね」と言い、「へえ、好きな女も残して来ておりやすから……あっしは、シマなんぞに興味はありやせんし、柄でもありやせんから」と言う。「又さん。お前さん、あたしを疑ってるんじゃないだろうね」「何をです?」「なら良いんだよ」……

Photo_6 「昨夜、羽沢の嘉兵衛宅に、鹿渡の島之助が出向き、密談数刻に渡りました」と酒井が報告している。「島之助は、三の松の子分を自分の側へ着けようと、毎日のように食を振る舞っております」と言うと、平蔵はニヤリと笑いながら「羽沢の嘉兵衛の道具にされているのが、分からねえのか」「黒谷の勘五郎ですが、これは追分の重八と駒込の料亭“浜野屋”で会合を重ねております」と付け加えた。「箱根の湯は放蕩に効くのかのぉ。忠吾、お前も早く病を治しておけよ」と言われた木村は、「はぁ?」と訳が分からずにいた。そこへ竹内が「又蔵が三河から帰って来ました」と告げると、平蔵は「馬鹿な奴だ!」と言い捨てて奥へ入ってしまうと、木村は「馬鹿な奴とは、私の事を言ったのでしょうか」と言い、一同は狐に摘ままれたようになってしまった。
 
Photo_12 又蔵は情婦の“おみね”(吉野敬子)の所にいた。「きょうは休み」と貼り紙がしてある、川っ縁にある小さな泥鰌屋である。「もう帰って来ないのかと思って……嬉しい」とおみねが又蔵に抱きつく。「心配。あんたが三河へ行ってから、変な男がここいらをウロウロしてたんだよ」「俺のほうは、藤沢辺りから尾けられていた」「本当!」Photo_8「大きな声を出すねえ。泣いたり、わめいたりしねえ約束で一緒になったんじゃねえか」「だって……あのまま遠くへ行っちまえば良かったんだよ」「どこへ行ったところで同じさ。俺の体には何人もの人の怨みが掛かってるんだ。俺が手に掛けた男の肉親やら子分やらが俺の命を……」「もうよしとくれ」と……。中の様子を覗っている男がいた。打上げの仙太郎(鵜沢秀行)と言う追分の重八の息のかかった殺し屋である。

Photo_9 その男が、追分の重八と黒谷の勘五郎が待っている部屋へ入ると、重八が「帰って来たのかい。で、芝の大元締めの様子はどうだ」と聞く。男は「寝たきりで。まだあの様子じゃとても」「じゃあ、まだ当分は帰って来られねえんだな」と重八はニンマリと頷いた。「おう、勘五郎どん。この男だ、凄えって言ってたのは」「又蔵が帰って来てますぜ。今、情婦(イロ)の所です」と告げた。浮き足立つ勘五郎の前で重八は「殺れるかい」と言うと、男は「百両なら、今夜にでも」と答えた。勘五郎は「殺った方が良い。奴は殺しにかけちゃ凄腕だ。ぼやぼやしてたら、こっちの方が殺られちまう」と怯えている。重八は「まぁ、俺に良い考えがある」と猪口をぐいっと干した。

 火盗改の用部屋に木村が書き物をしているところへ平蔵がやって来て、「箱根へ行け」と命じた。「お前の病を治すのだ」と言う。忠吾は「私はやはり病なので?」と聞くと、「放蕩の報いだ」と言われてしまい、忠吾は俯いてしまった。平蔵は「早く支度しろ。すぐ行くぞ」と言った。「今にも血の雨が降ろうという時に……」とぶつぶつ言っていると、「死にたくなければ、急げ!」と追い打ちを掛けられてしまった。

Photo_11 夜になって又蔵とおみねはまだ寝間着のままの姿であった。おみねが「ねぇ、あたしも一緒に行くからさぁ。いっそのこと、どこぞの山の中へでも入って、ひっそり百姓でもしたら……」「女という生き物はいつになっても、幾つになってもそれだ……俺の手が匕首の他に何が握れると言うんだ」「あんたは、何も握らなくて良いんだよ。あたしが……」「おみね。俺ぁなあ、ちょっと面白くなって来たんだ。今度の騒ぎだ。三の松の縄張りを、どっちがモノにするか、見物してえ気になってるんだ」「あんた、まさか。どっちにも味方しないんだろうね」と、その時、表の戸を激しく叩く音がした。

Photo_13 又蔵は、追分の重八と黒谷の勘五郎が待っている部屋にいる。勘五郎が又蔵に酒を勧め、徳利を差し出した。隣りの部屋では、仙太郎が脇差を構えて潜んでいる。重八が「実は、頼みがあって来てもらったんだ。人をね、一人殺ってもれえてえんだよ」「何処のどなたです」「両国の元締め、羽沢の嘉兵衛さんだよ。どうかね」「金次第でございますよ」「金積めば、殺ってくれるかい」「あっしには、それしか脳がございませんのでね」。「気に入った」という重八の横合いから勘五郎が「百両」と声を掛けた。又蔵は「両国の元締めが百両ですかい」と言うと、「百、百五十両出そう」という勘五郎に又蔵は薄ら笑いを浮かべている。重八は「良ぅし。二百両」「承知。しかし、手順は今夜中に頂けますね」と言う。「良かろう」というのを聞いて、仙太郎は脇差を収めた。

Photo_23 夜道を又蔵が走る。火盗改の酒井と竹内がそれを追うが、速すぎて追いつけない。又蔵を遮る男がいる。「又蔵さん」「誰でえ」「打上げの仙太郎です」と名乗り、「羽沢の者です。ちょいと顔を貸しておくんなさい。うちの元締めが是非話したい事がありなさるんで。是非とも」……嘉兵衛に呼ばれた部屋に通されると、袱紗に包まれた三百両を出し、「これで、追分の重八を殺っておくれ」と双方から殺しを頼まれる。又蔵は、こいつは面白れえ事になって来た、と心の中で呟いた。嘉兵衛は「持ってお行き」と鷹揚に言い、「ほぅら、やっぱり引き受けてくれたじゃねえか」と声を掛けると、襖が開き鹿渡の島之助が姿を現し、「又蔵どん、頼みますぜ」と声を掛けた。

 泥鰌屋に帰り、おみねに「全部で五百両ある」と金を出した。「この金を持って、明日の朝早く江戸を出ろ。訳は聞くな」と言った。「そうだなぁ、良いか。三河の平十親分の女将さんがいる。あのお人に身の振り方を頼んでみろ。五百両あれば、どうにでもなる」と言うと、「やっぱり、あんた元締めになる気なんだね」と、「そうじゃねえ。元締めになりたくってやるんじゃねえんだ。面白えからやるんだ。俺ぁ、この稼業に入って十年になるが、ただの一日だって面白え日はなかったぜ。吐き気がするような毎日だった」と言いつつ、一つになった……。

 火盗改用部屋へ立ち寄った酒井と竹内は宿直の山崎より、平蔵は木村を連れて箱根へ出かけた、と聞いた。「何て事だ」という酒井に「酒井さんへの言付けとして、平十の事件には手を触れるな、と言っておられました」と聞かされる。「お頭は我々に何か隠しておられる」と考え込む酒井。

 翌朝、人気の無いのを確かめて、「品川へ着いたら、旅支度になれ」とおみねに言い含める又蔵。「きっと、三河に来ておくれよ」と言い残し、おみねは出て行った。又蔵はすぐに戸口の心張り棒をかって、天井裏の小部屋に上がって梯子を外し、脇差を抱きながら寝てしまった。

Photo_14 江戸から馬を飛ばして箱根までやって来た酒井にのんびりと釣り糸を垂れながら「弱ったなぁ」と言う平蔵。「弱っているのは、私たちです」と憮然とした顔で酒井が言う。「見ぬ振りは出来ぬかなぁ」即座に「出来ません」という酒井。「三の松の縄張りでは、明日にも殺し合いが始まりかねません」と言う。「おぬし、湯に入って行かんか。忠吾、案内してやれ」と暢気な事を言っている。「お頭。我々に話せぬ事があるのですか」と尋ねた。「出来れば、話したくない。もう暫くの辛抱さ」と平蔵は言った。

 泥鰌屋の戸を激しく叩く音に又蔵は目を覚ました。戸を蹴破って重八の子分どもが押し入ってきた。上から覗いていると、殺し屋の仙太郎が、「もう居ねえよ。もたもたしてる奴じゃねえ」と出て行ってしまった。又蔵は「やっぱりバラしに来やがったか」と呟いた。

 「芝の大元締めが帰れば、縄張り争いは未然に収まると」と酒井が言う。猪口を片手に平蔵は「帰らないなぁ、あの男は」と言った。「体の具合が悪いので」と酒井。「いやぁ、毎日のように、下の川っ縁を歩いているよ。帰ればまた面倒な騒ぎに巻き込まれるからだ」と言うが、酒井は「我々が帰るよう説得したらいかがでしょう」と言うと、「いやぁ、儂は芝の爺さんと同じ考えだ。放っておけば争いは収まる、という考えだ」と言う。

 夜になって、泥鰌屋の裏部屋から梯子が降り、又蔵が現れ「又蔵、さぁ面白れえ仕事を始めるぜ」と呟いた。

Photo_15 夜道を、子分に周りを守らせた重八が駕籠に乗っている。又蔵がふいに現れ、あっという間に重八は仕留められた。また嘉兵衛の家の前が騒がしい。嘉兵衛と島之助は別の誰かに殺されていた。又蔵は「誰が殺りゃあがった」と歯噛みしている。朝になって又蔵は泥鰌屋へ帰って来た。店に潜んでいた仙太郎に不意を突かれて殺られてしまった。

 江戸での縄張り争いの一件を竹内が箱根まで知らせに来た。それにより、追分の重八、羽沢の嘉兵衛、鹿渡の島之助。それに岩渕の又蔵が泥鰌屋で殺害された事が判明した。平蔵は「夕べ殺害されたのは四人か」と呟くと、忠吾が「最初から数えると六人です」と言うと、「まだ増えるだろうなぁ。それを待っているのだ。汚ねえ奴らは、汚ねえ奴らに始末させれば良い」と平蔵は言った。

Photo_16 湯治場の宿の部屋へ風呂上りの仙太郎が入っていった。そこには大元締めの“芝の治兵衛”(宮口精二)が座っていた。「この度は、ご苦労さんだったねぇ。良くやってくれなさった」と仙太郎に声を掛け、「これは、少ねえが約束の二百両だ」と言って袱紗にくるんだ金を出した。金を受け取る仙太郎に「一晩でカタが付いたとは、目出度えこったよ」と笑っている。「これで、三の松の縄張りはそっくり大元締めの物で」と愛想を言っている。「みんな何処の誰とも知れねえ奴の手に掛かって、バタバタと死んじまっちゃ、こりゃどうしてもこの儂が乗り出さずばなるめえよ」「どうだね、お前さん。下谷のシマを持ってみる気はPhoto_18ないかね。これだけの手柄を立てなすったんだ、それ位の事はしてあげたいねえ」と治兵衛は言う。酒を勧めた後「女を用意してあるんだ。気に入るといいがねぇ。お前さん、ちょっと目をつぶってておくれ」と、その気になった仙太郎は懐手ににやついている。「さぁ、入っておくれ」と合図する。仙太郎の後の襖が開き、襦袢を羽織った男“ 船戸の権”(高角宏暁)に刺されてしまった。「お前さんも、この芝の治兵衛にゃ、太刀打ちできなかったねぇ」と、治兵衛という男は、そこまで用意周到な男であった。「これで、明日は江戸だ。病気でもねえのに、随分と長いこと湯治をしたもんだ」と盃を干した。そして船戸の権に「金はそいつの懐にあるぜ」と言った。

Photo_19 障子を開け、部屋を出て行こうとした男に当て身を食らわせた平蔵が立っている。誰だ、という治兵衛に「一人酒は退屈だろうと思ってな……」と言った。治兵衛は「鬼平!」と目を瞠った。「肝心要の勧進元を捕まえたくてねぇ。病もねえのに、長いこと湯治をさせて貰ったよ」と平蔵が治兵衛に語りかけた。「貴様、俺の上を行く悪党だ」と憎々しげに言う治兵衛に、「何、悪党だと」と言った平蔵に治兵衛は立ち向かって言ったが、脇差しを取り上げられ、「掛かって来るも良し、死ぬも良し……」と言うと、治兵衛は平蔵から脇差しを取り上げ、「おめえさんの遣り口は良く分かったよ。こうすりゃ気が済むんだろう」と脇差しを己の胸に突き立てる振りをして、平蔵に斬りかかった。が、適わず腹に脇差しを突き立てた。「悪党は自分で留めを刺すだろうよ」と平蔵は言った。「てめえは、大芝居の勧進元は、俺だと思ってやがんのかい。どっこい、違うぜ。俺も頼まれ仕事さぁね」と言う。「何、そいつは誰だ」「ええい、言うもんかい。金輪際言わねえ」と言いつつ果てた。平蔵は「誰だ、そいつは」と睨んでいる。

Photo_20 湯治場での一件も落着した所で、平蔵ら一行は旅支度を終えた。今回の平蔵の遣り方に不満が膨らんだ酒井と忠吾は、釈然としない様子でいた。「このような取り締まり方は……」という酒井に、「着いて来られなきゃ辞めるも結構。悪というものにはな、取り澄ました顔じゃあ立ち向けえねえもんだ。奴ら言ってるじゃねえか、俺を鬼だと」「勧進元は、あの女だ。子がなく、囲い者が懐妊したと知って、憎さのあまり平十と妾を殺し、治兵衛に後の事を相談した」と平蔵は目星を付けた。

Photo_22 お才はのんびりと池の鯉に餌をやっている。そこへ又蔵の女おみねが出刃包丁を構えて立っている。「あんたのせいで、あの人は殺されたんだ」「何で、あたしのせいなんだよ」「あの人に縄張りを押しつけようとしたんじゃないか! 返せよ! あの人を戻しておくれよ!」と必死の形相である。縺れた末に、お才もおみねも死んで、生き証人は死に絶えた。

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コメント

この結末は、「鬼平ハードボイルド」の極みですね。

投稿: take9296 | 2012年12月 5日 (水) 19時37分

 こんにちは、take9296さん。鬼平犯科帳=ハードボイルド、という解釈も出来るんですね。

 アクション、サスペンス、ハート・ウォーミングにハードボイルドが加われば、敵無しですね。

投稿: | 2012年12月 7日 (金) 15時25分

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