« 鬼平犯科帳 '69 第三十話 | トップページ | 鬼平犯科帳 '69 第三十二話 »

鬼平犯科帳 '69 第三十一話

女の毒

Photo監督: 古川卓己  脚本: 小川英  原作: 池波正太郎(文藝春秋刊、オール読物連載)

出演: 松本幸四郎 (長谷川平蔵) 竜崎勝 (酒井祐助) 小鹿敦 (小柳安五郎) 池田駿介 (山田市太郎) 北川陽一郎 (山崎国之進)

ゲスト: 西尾恵美子 (お長) 佐原健二 (野川の三次) 戸田皓久 (船形の由蔵) 浅野進治郎 (聖天の吉五郎) 宮川洋一 (両国の源兵衛) 仁内達之 (田町の弥七) 関根信昭 (役者) 高松政雄 (清兵衛)

Photo_2【ものがたり】 雨の中を一人の武士が数人の町人と商家の軒先で雨宿りをしている。この男、火盗改方同心・小柳安五郎(小鹿敦(のち小鹿番))といい、お調子者という点では同心・木村忠吾と良い勝負の者であった。そこを蛇の目傘を差して通りかかった女を見て、「良い女だなぁ……」と見とれているところなど、忠吾と似たり寄ったりなのである。この女が目の前で下駄の鼻緒を切ったのであった。町人たちの話によると、女は香具師の元締め聖天の吉五郎(浅野進治郎)の一人娘で浅草小町と噂されている“お長”(西尾恵美子)だと言う。素早く駆け寄り、鼻緒のすげ替えをしてやった礼にと一緒に傘に入り、すっかり得意になった小柳であった。

Photo_3 当時、庶民の娯楽は少なく、寺や神社での縁日は数少ない息抜きの場であったようで、この日も長谷川平蔵は同心の小柳、山田、山崎らを伴い境内の茶店で見回りの途中に休んでいた。すると、かつて見知ったお長が聖天一家の若い衆を連れてやって来た。平Photo_4蔵はお長の連れの男に目を付け、小柳にはまず男の素性を調べるよう言い付けた。石段を降りて行くお長に小柳は気安く「お長、お長」と声を掛けた。お長の顔見知りと感じ、連れの若い衆も控えている。小柳の目当てはお長なのだが、体よく断られ、私の代わりにと“野川の三次”(佐原健二)に「小柳様のお相手をするように」と言い使ってしまった。一緒に飲みながら、聖天の吉五郎は病からすっかり気が弱くなり、お長の相手は“船形の由蔵”(戸田皓久)という同じ身内の代貸しと決め、跡目を継がせるようだと三次から聞き出した。

Photo_5 三次は吉五郎から呼ばれ、お長を好きなら一緒になってくれ、と頼まれる。半信半疑でいる三次に、お長は三次と一緒になれなければ家を出て行く、と言っているのだ、と聞かされた。三次は有頂天、お長も想いが叶ったのであるが、内心由蔵は腹の虫が治まるPhoto_6 はずはなかった。が、お長と三次に祝福の言葉をかけて一人去って行った。そして境内を見回っていると、向こうから聖天一家の縄張りを狙っている同じ稼業“両国の源兵衛”(宮川洋一)が子分を連れてやって来、「此処も、いつ俺の縄Photo_7張りになるかも知れねえから」と嫌みな言い方をし、薄ら笑いを浮かべながら去っていくのであった……。という所までを三次は茶屋の部屋で小柳に語ったのである。すると、隣りの部屋から聞き覚えのあるお長の声がするので、二人は驚いてしまう。耳を傾けていると、相手は役者のようであり、お長から縁切りの話を持ち出しているようであった。男連中は男癖の良くないお長に振り回されていたのである。まさに、百年の恋も一夜で冷める、といったところであろう。

Photo_8 この顛末を小柳は火盗改役宅に戻り、平蔵はじめ酒井らの前で報告した。平蔵は三次の事が気になり、小柳に三次の様子を探るよう命じた。果たして三次の長屋に着いた小柳を待っていた者は、長屋の大家・清兵衛(高松政雄)であった。「三次は、もうここには居りません。夕方に戻って来、そのまま行く先も告げずに出て行っPhoto_11てしまいました」と言うのである。そのままとって返し聖天一家を訪れた小柳に由蔵は「三次はもう聖天一家とは何の関わりもござんせん」と言った。三次はお長との話を断って出て行った、というのである。渡世の掟により、親分の顔に泥を塗った形の三次は破門という処分になるのである。逃げた三次の命が危ないと感じた平蔵は、火盗改の同心らに三次の保護を命じたのだが、三次の消息は消えたままであった。

Photo_9 お長は“田町の弥七”(仁内達之)という暗殺者と密会し、可愛いさ余って憎さ百倍の三次殺害を依頼した。こうして三次は、聖天一家の子分たちとお長が放った暗殺者に追われることになった。三次の生まれ故郷の小田原でも万が一の事態を考え、奉行所に三次の保護を依頼してあった。が、暗殺者は三次が生まれ故郷の小田原に舞い戻るであろうと予測し、三次の出現を待ち構えていたのである。一月、二月経つと奉行所は手を引いてしまったが、暗殺者は辛抱強く三次を待っていた。そして三次は小田原に戻って来た。完全に追っ手から逃げおおせたと思っていた三次は、まさか刺客が待っていようとは思いも寄らなかったのである。

Photo_10 街道脇で一服しようと足を止めた三次は地蔵の陰から声をかけられた。ぎょっとする三次に、「久し振りだったねぇ、三次さん」と弥七が声を掛けた。「おめえは、田町の弥七。誰に頼まれた」と言うと、「お嬢さんさ、百両でねぇ」と答えた。「だが分からねえ、何だっておめえさん、お嬢さんを袖にしたんだ」それには答えず三次は長脇差を抜いて身構えた。弥七と三次は互いの一太刀で勝負は一瞬にして決した。三次は左腕を切り落とされたが、弥七は絶命したのである。

Photo_12Photo_13 その頃江戸では、お長と船形の由蔵が一緒になり聖天一家を継ぎ、吉五郎は間もなく息を引き取った。しかし、由蔵が聖天一家の親分で居られたのは一年間であった。聖天一家の子分たちは両国の源兵衛に寝返ったのである。子分たちに馬鹿にされ、女房のお長にまで馬鹿にされた由蔵は単身両国の源兵衛一家に殴り込みを掛けた。だが三下を三人斬っただけで由蔵も江戸から姿を消した。それから数ヶ月後、秋も終わりの頃である、甲州街道でへとへとになっていた由蔵は通りかかった馬子を呼び止めた。なんとその馬子は左腕の無くなった三次であった。日暮れまでに内藤新宿まで行きたいのだと告げた。聖天の縄張りは両国の源兵衛のものになり、お長は源兵衛の妾になっているのだという。そのお長に一目会いたさに危険を冒して江戸へ行くのだと言った。

Photo_14Photo_15 その夜、火盗改役宅の小柳を馬子の格好をした三次が訪れた。門番と共に小柳は表まで出たが誰もいなかったが、手紙のようなものが置いてあり、「よしざうが お長をころしにいきました 三次」と書いてあった。由蔵は、源兵衛は一撃で殺したがお長に匕首で刺され、駆けつけた火盗改の酒井と小柳は由蔵の断末魔の声を聞いた。由蔵とお長は重なるようにして息絶えていた。後に、平蔵は魔性の女“お長”をカマキリの牝に喩え、小柳らに語った。

|

« 鬼平犯科帳 '69 第三十話 | トップページ | 鬼平犯科帳 '69 第三十二話 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

原作は「江戸の暗黒街」中の「男毒」。三次ではなく伊三次だそうです。道理で鬼平の出番が少なかったわけですね。

投稿: take9296 | 2012年12月26日 (水) 19時41分

間違えました。「女毒」でした。

投稿: take9296 | 2012年12月26日 (水) 19時42分

 どうも、いつも有り難うございます。鬼平犯科帳は原作者の池波正太郎先生の短編をいくつか集めて一つの物語を作ることがあります。本作もその一つなのだと思います。

 登場人物の中には、似たような名前がいくつも出てきますので、間違えやすいですね。伊三次と三次もそうです。普段、火盗改の密偵として活躍している“伊三次”(堺左千夫さん)と本作の“三次”(佐原健二さん)とは別人です。密偵・伊三次は本作には出ていませんが、他の作品にはたいたい出演しています。

 本作の三次は、左腕を斬り落とされてしまっていますから、目立ちますよね。

投稿: | 2012年12月27日 (木) 19時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/172527/56389350

この記事へのトラックバック一覧です: 鬼平犯科帳 '69 第三十一話:

« 鬼平犯科帳 '69 第三十話 | トップページ | 鬼平犯科帳 '69 第三十二話 »