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2012年10月

鬼平犯科帳 '69 第四話

蛇 の 目

Photo監督: 小野田嘉幹

原作: 池波正太郎
脚本: 田坂啓

出演: 松本幸四郎 (長谷川平蔵) 竜崎勝(酒井祐助) 牟田悌三 (小房の粂八) 市川五百蔵 (竹内孫四郎) 池田駿介(山田市太郎)

ゲスト: 西村晃 (蛇の平十郎) 小池朝雄 (彦の市) 川口小枝 (おその) 鶴見丈二 (徳太郎) 織本順吉 (紋蔵) 梅津栄 (金助) 稲吉靖 (伊兵衛) 土方弘 (宗六) 北川めぐみ(おもと) 大前鈞 (蕎麦やの主人)

Photo_2【ものがたり】 座頭の彦の市(小池朝雄)は、表の稼業は按摩であるが、裏の稼業といえば盗人仲間で“嘗(な)め役”と“引き込み”という、目指す押し入り先の見取り図や、金蔵の鍵なども型取るのであった。この男、当然めくらではない。盗人の頭、蛇(くちなわ)の平十郎(西村晃)の手下で紋蔵(織本順吉)という男に、押し込み先の日本橋高砂町・幕府御殿医・千賀道有屋敷の見取り図と金蔵の鍵を型取った蝋型を渡す。これで下準備は整ったのである。
Photo_3 彦の市は自宅におその(川口小枝)という女を囲っているのであるが、或る日のこと自宅近くですれ違いざまに商人風の男・徳太郎(鶴見丈二)とぶつかった彦の市は、何か不穏なものを感じながら女の待つ家へ向かった。
 そこには、たった今まで男と寝ていた事が見てとれるのだが、女は彦の市が目明きだとは気づいていない……。彦の市は先程の商人風の奴がおそのの相手、つまり間男であると直感していた。
Photo_4Photo_8 平蔵と同心・竹内が蕎麦屋で近頃評判の天麩羅蕎麦を食べている。奥座敷から勘定を済ませて出てきた番頭風の小男の素振りが妙に気にかかり、橋まで追ったが男は忽然と消えてしまった。この男こそ大悪党の蛇の平十郎だったのである。
 ある晩、おそのと徳太郎は舟を借りて密会している現場に彦の市が現れ、徳太郎を殺害して逃げ去った。その途中で見回り中の酒井祐助(竜崎勝)と出合ったが、ふいにつかまれた酒井の袖には、徳太郎の血がべっとりと付いてしまっていた。徳太郎殺害の下手人であることは明白、火盗改の探索が始まった。
Photo_9Photo_10 彦の市は必ず女のもとへ現れる、と確信した平蔵ら火盗改メ方はおそのから目を離さず張り込みを続けていた。はたして彦の市は乞食の風体でおそのの前に現れた。火盗の追跡を振り切り、橋の欄干から下を通行していた小舟に飛び移り、まんまと逃亡してしまう。だが、この小舟に乗っていた二人の男……、蛇の平十郎の手下、紋蔵と金助であった。
 押し込む手筈が整った千賀道有宅の女中をたらし込み、裏木戸を開けさせるはずであった引き込み“徳太郎”を殺害した彦の市を待っていたのは血の制裁であった。
Photo_6 平十郎は引き込みから屋敷へ侵入出来なくなった為、すぐ脇を流れる川から水門伝いに侵入し、寝ている家人すべてに粘土で口を封じ、さらに針で心臓を一突きして殺害する方法を考えついた。これで騒がれることなく押し込みは成功すると践(ふ)んだ。
 あくる雨の朝、清水門外の火附け盗賊改メ役宅の門前に一人の女が佇んでいる。失敗続きで消沈していた竹内が門前の女に声をかけ、役宅内に招じ入れて酒井とともに話を聞くと失踪した徳太郎の身を案じたおもとが役宅を訪れたものであった。平蔵がおもとと徳太郎の間柄を尋ねると、「夫婦の約束をし、駆け落ちの日時を決め、その時分に裏木戸を開けて待っている」という約束をしたきり徳太郎は姿を現さなくなった、というものであった。これで、押し込み先とその日時が判明したのである。
Photo_7 押し込み当夜、千賀屋敷門前に屋台の二八蕎麦屋が現れる。この蕎麦屋、平十郎の手下で伊兵衛という盗人。その目前を大身の大名のものと思われる女乗物の駕籠が二挺、千賀屋敷に入っていった。やがて一刻ほどして門が開き、くだんの二挺の駕籠が十五六人の供を従え出て行った。
Photo_11 まんまと侵入した蛇の平十郎一味であったが、寝所には酒井率いる火盗の配下が、また金蔵に到達した平十郎を待っていたものは、空の千両箱と平蔵であった。金蔵にあるはずの千賀の当主が賄賂で貯めた八千七百両余りの金は、先程の駕籠二挺に乗せて小石川養生所に移動してしまっていたのだ。屋敷に入って行った時は火盗改メが扮装したものであり、出て行ったのは千賀屋敷の奉公人たちであったのだ。このトリックには、さすがの蛇の平十郎も見抜けず、平蔵の仕掛けた罠に陥ったのである。こうして、一味のものは全員捕縛された。
 その後、茶屋の店先で酒を酌み交わす平蔵と酒井。茶屋ではおおそのが何もなかったかのように陽気に振る舞っていた……。

【あとがき】 蛇の平十郎役の西村晃という役者さん、まさに打って付けの役です。蛇の様な執念深さを感じさせる眼差しが凄みあります。
 また、小池朝雄、織本順吉、梅津栄、稲吉靖、土方弘など名脇役がずらりとサポートしているので目が離せません。

【中村吉右衛門版】 石橋蓮司(蛇の平十郎)  山田吾一(彦の市) 誠直也(白玉屋紋蔵) おその(松居一代)
 中村吉右衛門(長谷川平蔵宣以) 多岐川裕美(久栄) 高橋悦史(筆頭与力・佐嶋忠介)神山繁  尾美としのり(木村忠吾:うさぎ) 蟹江敬三(小房の粂八) 篠田三郎(筆頭同心・酒井祐助)  江戸屋猫八(彦十) 柄本明(十蔵) 真田健一郎 (沢田小平次) 沼田爆(ねこ殿)

という配役でした。どちらの作品が良いでしょうか? 西村晃、石橋蓮司では、甲乙付けがたいです。

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鬼平犯科帳 '69 第三話

谷中いろは茶屋

Photo監督: 小野田嘉幹
原作: 池波正太郎
脚本: 井出雅人 永井素夫
出演: 松本幸四郎(長谷川平蔵) 竜崎勝(酒井祐助) 古今亭志ん朝(木村忠吾) 牟田悌三 (小房の粂八) 池田駿介(山田市太郎) 市川五百蔵(竹内孫四郎)
ゲスト: 春川ますみ(お松) 神田隆(墓火の秀五郎) 二瓶正也(国太郎) 渡真二(油屋乙吉) 加藤欣子(お徳) 木田三千雄(米屋の主人)
_2【ものがたり】  ある雨の朝、火盗改メ方は俄に騒々しかった。それは駒込の呉服問屋“備前屋”に押し入った賊の残忍な殺戮であり、主人から奉公人に至るまで15人、一人残らず後ろ手に縛られたまま刺し殺されていた。この手口は“墓火の秀五郎”一味の仕業に相違ない、という事であった。
 木村忠吾の市中見回り先から目と鼻の先で起こった大事件。酒井から普段の身の入らぬ仕事ぶりを叱責される始末であった。それというのも、女好きの木村忠吾、昼日中から「いろは茶屋」という出逢い茶屋で“お松”という女に入れ込んでいた。親から受け継いだ金はもとより、親類縁者、友人とあらゆる所から借りるだけ借りた金をこのお松につぎ込んでいたのだが、それも今では「二進も三進もいかぬ……」と頭を抱えていたのだ。
Photo_2
 いろは茶屋の上客で、「川越の旦那」と呼ばれ武州・川越の絹問屋の主人とだけ名乗る男、実は極悪非道の大悪党“墓火の秀五郎”(神田隆)だが、忠吾と同じお松の馴染み客である。この男が、じきに川越に戻ると言い十両の金をお松に渡し、好きに使って良いと言い残す。それからは、忠吾はその金でいろは茶屋での遊びの金の心配はなくなったかに見えたのだが……。
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 火附盗賊改メ方の密偵、小房の粂八はあらゆる聞き込みから“墓火の秀五郎”の立ち回り先が「いろは茶屋」であることを突き止め、必死の探索を始めた。そこで、あろう筈のない光景を見てしまい唖然とする粂八であった。いろは茶屋の離れの一室で、かの秀五郎と談笑していた相手は、お松という娼妓と火盗改メの同心である木村忠吾であった。
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 粂八の報告から、知らぬとは言うものの盗賊の金で女を買い、酒肴のもてなしまで受けているという事が公にならぬうちにと、忠吾は平蔵から役宅内での書類整理を仰せつかり、一切の外出を禁止されてしまった。その晩から、いろは茶屋の周りは火盗改メの配下の者たちの厳しい張り込みが開始されていた。
 その目の前を北町奉行所の役人が大挙いろは茶屋での手入れを始めてしまい、当の秀五郎はまんまと逃走してしまった。奉行所では墓火の秀五郎が居るなどとは夢思わず、上野界隈の坊主による茶屋遊びの取り締まりであったようだ。逃走する秀五郎を尾行した粂八と山田市太郎は境内で秀五郎を見失ってしまい、平蔵から大目玉を頂戴してしまった。忠吾は「男は切り上げ時が肝心なのだ」と暗にお松との茶屋遊びにクギを刺されていた。
 墓火の秀五郎の盗人宿・数珠商いの“油屋”に手下と密談する秀五郎は、かねてから計画していた寺への押し込みを「今夜、いそぎ働きをする」と皆に告げた。
 平蔵から女遊びにクギを刺されていた忠吾だが、その意味がまったく分からずその夜、お松の肌が恋しくて身悶えしながら目を覚ます。そして、「夜が明けぬうちに帰れば良いのだ!」と役宅を抜け出した。持ちだした“火盗”の提灯を掲げれば、木戸はフリーパスである。案外、忠吾は悪知恵が働くのであった。
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 金品を強奪し、引き上げ時となると秀五郎は手下に「いつもの通り、綺麗に後始末しろ!」と手下に指図する。後ろ手に縛られた住職やその内儀、寺の者たち全員が刺し殺された。寺の塀を乗り越え、地上に降りてくる数人の盗賊を発見した忠吾は、お松の肌に未練を感じながらも賊の後を追った。盗人宿の“油屋”まで首尾良く追って、隠れ家を確認した忠吾は、近くの米屋を叩き起こし火盗改メの役宅へ通報させるのだった。この時、米屋の屋根に取り付けてある看板の裏に潜む忠吾と二階の格子窓からの米屋の主人(木田三千雄)との会話が愉快なのである。コメディアンと落語家の絶妙のコンビネーションだ。
 墓火の秀五郎一味が逃走しようとする直前、火盗改メ方が油屋へ討ち入り事件は解決した。火盗の役宅では、この度の忠吾の働きに同僚同心らは感心することしきりであった。また、平蔵から三両の報奨金を目の当たりにし、「二度とあの様な場所へは立ち入らぬ」と公言した忠吾であったが、女好きの木村忠吾いろは茶屋のお松のもとへ……。
【あとがき】 墓火の秀五郎役の神田隆という役者さん、その昔は東映の悪役で良く見かけました。
 春川ますみは、元日劇ミュージックホールのストリッパー出身。豊満な肉体で“うさ忠”を虜にします。
 二瓶正也は、ウルトラマンの地球防衛軍の隊員。
 木田三千雄は、飄々としたベテランのコメディアンです。
【中村吉右衛門版】 尾美としのり(木村忠吾) 杉田かおる(お松) 長門裕之(墓火の秀五郎) という配役です。
 新旧の作品、色気という点でオリジナル版に軍配を上げざるを得ません。

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鬼平犯科帳 '69 第二話

四度目の女房

監督: 小野田嘉幹

Photo

原作: 池波正太郎
脚本: 野上龍雄
出演: 松本幸四郎 [八代目] (長谷川平蔵) 竜崎勝 (酒井祐助) 古今亭志ん朝 (木村忠吾) 牟田悌三 (小房の粂八) 市川五百蔵 (竹内孫四郎)
ゲスト: 林与一 (伊之松) 林美智子 (おまさ) 田島義文 (中屋利三郎) 松山照夫 (仁吉) 辻伊万里 (おせい) 園八雲 (留) 木村千吉 (松)
Photo_2【ものがたり】 押し入った先の家人一同を縛り上げ、土蔵から滑車を用い千両箱ごと三千八百両余りを盗み出し、煙のように消えた……しかも、誰一人として賊の人相を見ておらず、押し入った人数などの手掛かりになるような情報が一つもない、という盗賊が現れた。八丁堀では手に余り“火附盗賊改方”へ捜査を依頼してきた。
 火盗改で調べたところ、過去五年の間に川越、高崎、小田原など江戸以外でも同様の手口で何千両もの大金が盗まれる事件が発覚する。居酒屋で飲みながら長谷川平蔵(松本幸四郎)は密偵の粂八(牟田悌三)に、「何か思い当たる節があるか?」と問い、粂八は「何を言ってもお笑いになりませんか?」と言いつつ“幻小僧”という名を口にする。
 そんな中、改築工事をして間がない“橘屋”の蔵からまたしても大金が盗まれた。火盗改から酒井祐助(竜崎勝)と木村忠吾(古今亭志ん朝)が出張り、蔵を調べたが異常はないと思われたが、偶然に木村が蔵に仕込まれた細工を発見する。大工“大作”出入りの腕の良い職人“伊之松”(林与一)という男が図面を引いた仕事である事が判明した。
Photo_3 伊之松は、一年ほど前に添え状だけ所持し、ふらっと“大作”に現れ、武州の在という事しか分からぬ男だったが、腕も良く人当たりも良いので当時大作で下女として働いていた“おまさ”(林美智子)と所帯を持たせ、裏長屋につましくひっそりと住んでいた。その伊之松が突然姿を消してしまった。
 伊之松が必ず女房のおまさの所へ現れると睨んだ平蔵は、橘屋でのからくりを暴いた褒美にと、女好きの木村に伊之松の居なくなった長屋に住み、おまさの動向を探るという願ってもない役目を仰せつかる。
 探索を終えて酒井らが伊之松に関する情報を持ち帰った。川越、高崎、小田原と、それぞれ被害のあった店の改築工事に伊之松が関与してい、さらにそれぞれの土地で所帯を持っていた、という不可思議なものだった。急に亭主が消えてしまった女たちは、女郎になった者、行方知れずになている者、そして一人は病で死んでいた、という悲惨なものであった。
Photo_4  “幻小僧”一味の頭“中屋利三郎”(田島義文)は出逢い茶屋「ひし屋」に女中として働いているおまさに恋慕し、ひし屋のおかみを言いくるめ、しばらくの間だけ酒の相手をするよう頼まれる。痺れ薬を入れた酒を無理に飲ませ、利三郎に手籠めにされたおまさは、それからひし屋で客をとる女になっていた。一味の繋ぎの男(松山照夫)も、頭が夢中になるほどの女を手籠めにしようと機会を狙っていた。男は、おまさを待ち伏せて森へ引き込み手籠めにしようとするが、失神したおまさを自分が殺してしまったと早合点し、その場を逃げ去り尾張へ向かった。
Photo_5 おまさの事が気になって仕方がない忠吾は、逃げ去る男とすれ違った。忠吾は気絶していたおまさを救ったのだが、男はそんなこととは知らず、横恋慕して振られた利三郎のこと、同じ女を殺してしまった事などを、伊之松に語る……。「首に刃物傷のある女で、名は“おまさ”……」と聞いた伊之松は逆上し、男を刺し殺して宿から逃げ出した。 
 一年以上も行方知れずであった伊之松は、尾張名古屋のご城下、尾張藩御用達“淀富”に伊太郎として居た。繋ぎの男と宿屋で密会し、狙う相手の見取り図、細工の箇所、付近町並みの地図などを渡すのが目的であったが、先にあるように、逆上した伊之松に殺される。もはや復讐の鬼となった伊之松は、利三郎を待ち伏せてノミで刺し殺し、己も利三郎の手下に刺されて息絶える間際、“幻小僧”捕縛のため一味を取り囲む平蔵に、おまさの墓を建てて欲しいと訴える。(あぁ、勘違い)
Photo_7 生き残ったおまさは、今日もひし屋に居た。伊之松の帰りをを待ちながら、「こんな暮らしをあの人に知られたら、江戸には居られない……。上方へでも行こうか……」と、ひし屋のおかみを相手に呑気な事を呟いていた……。
  “おまさ”というだけで、密偵を思い浮かべてしまったが、これは林与一演ずる大工の女房の名前。密偵のおまさは、「決闘」から登場します。

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新シリーズ(?) 鬼平犯科帳 '69

Photo_5鬼平犯科帳 '69

第一話 血頭の丹兵衛

監督: 高瀬昌弘

原作: 池波正太郎

脚本: 柴英三郎

出演: 松本幸四郎 [八代目] (長谷川平蔵) 竜崎勝 (酒井祐助) 牟田悌三 (小房の粂八) 山吹まゆみ (お葉) 市川五百蔵 (竹内孫四郎) 池田駿介 (山田市太郎) 淡島千景 (久栄)

ゲスト: 市川中車 (血頭の丹兵衛) 亀井光代 (志乃) 山本耕一 (鳥尾大三郎) 他

 此処へ書き込むのは、ずいぶんと久し振りになります。洋画・邦画、新・旧を問わず何でも観る! というコンセプトから日々忙しく過ごしておりました。さて、又々現れましたのには訳がありまして、以前「鬼平犯科帳」(中村吉右衛門版)を観まして、痛快娯楽という観点ではこれ以上の作品群はあるまい、と思っておりましたところ、1969年(昭和44年)製作の「鬼平犯科帳」(松本幸四郎版)を全作揃えることとなりました。

 現在、約3分の1ほど揃いましたので、順次ご紹介していきたいと存じます。また、中村吉右衛門版「鬼平犯科帳スペシャル」もすべて所蔵いたしましたので、そちらもご紹介していきます。

【作品内容】 池波正太郎原作のテレビ時代劇。東宝及び松竹が制作し、NET系とフジテレビ系で放映された。主人公・長谷川平蔵を八代目松本幸四郎、丹波哲郎、萬屋錦之介、二代目中村吉右衛門が演じている。NET版は開始当初モノクロで、途中からカラー放送となった。

Photo_3  TV作品における最初の長谷川平蔵役は歌舞伎役者の八代目松本幸四郎で、このTVシリーズは「原作のイメージそのまま」という高い評価を受けた。これは幸四郎の演技力もさることながら、原作者の池波が長谷川平蔵の人物像を構築する際に、劇作を通じて親交があった幸四郎の面持ちや人となりを少なからずモデルにして書いたため。後年テレビ版で4代目の長谷川平蔵を演じた幸四郎の次男・二代目中村吉右衛門はインタビューなどで、「あて書きなんだから親父は素のまま演じれば良かったが、自分はそういうわけに行かないのでそう簡単にはいかない」といった心境を告白している。

Photo_4 その吉右衛門は最初のTVシリーズで平蔵の息子・辰蔵を演じ、親子共演している。彼は実父そっくりの風貌を理由に、2作目のTVシリーズを作成する際、是非長谷川平蔵をと懇願されたが、実際の平蔵に比べ若過ぎることを理由に断っている。そして4作目のTVシリーズになって、長谷川平蔵が火付盗賊改方に着任した頃とほぼ同じ年齢になったため、ようやく演じることになったという経緯がある。なお吉右衛門によれば、原作者の池波からも吉右衛門が平蔵と同年代になれば演じて欲しい(幸四郎は実際の平蔵に比べてかなり年上だった)と当初から言われていたのだともいう。

Photo_6  原作を使い切ったらドラマは終了する、つまり原作に基づかないドラマは制作しないという原作者との取り決めによって、中村吉右衛門版が全作品(池波の死によって未完となった遺作は、エンディングをシナリオライターが補った)をドラマ・映画化した2001年の第9シリーズを最後にシリーズは一旦終了となった。ただし幸四郎の時代に、当時連載中だった原作の小説が数量的にドラマの放送回数に間に合わなくなるという事態が起こり、窮余の策として『鬼平犯科帳』以外の池波作品から転用できるものを池波の諒承を得たうえで書き換えたドラマ・オリジナル脚本が数作あり、これが吉右衛門版でも再使用されている。これとは別に、吉右衛門の時代には数篇の原作をひとつにまとめたスペシャル版を制作することがよくあった。

 こうした手法を使うことにより、鬼平ファンからの放送復活を望む強い声に応えるかたちで、2005年から年1作程度のペースで鬼平犯科帳スペシャルが制作されている。

Photo_7 【あらすじ】 江戸市中を恐怖に陥れる凶悪な押し込みが跋扈し、押し入った家中の者を一人残らず惨殺して去る、という事件が続発した。また、その現場には“血頭丹兵衛”と書かれた木札が残されていたのだった。

201209201701  平蔵は、その惨殺死体の凄まじい斬り口から、侍崩れが仲間に居ると確信する。元、女賊であったが今では密偵となっている矢場の女お葉の情報により、その侍は“鳥尾”という浪人者である事までは判明し、酒井と共に賭場へ探索に出向いた際、その場に居合わせた職人風の男が逃亡を図るが境内に追い詰め、男を捕縛した。「火付盗賊改方」では執拗な詮議が行われ、ついに盗人仲間では名の通った錠前師“小房の粂八”(牟田悌三)は、「本物の血頭の丹兵衛の仕業じゃねぇ。本物ならこんな非道はしねぇ、偽物だ!」と悲痛に叫ぶのだっだ。

Photo_8   小房の粂八は是が非でも偽物の丹兵衛の化けの皮を剥がしたい、と平蔵に懇願する。それを受理した平蔵は、粂八を信じ単身丹兵衛の探索に向かわせるのだった。鳥尾の手引きによって丹兵衛の隠れ家で再会した粂八は、外道に落ちた丹兵衛から「今じゃ、昔のようなお勤めは出来ねぇ。手っ取り早く皆殺しにするに限る。」、「昔のように堅い事は言わねぇ、女だって手籠めにしたって構わねぇぜ。」とまで言い、仲間に引き入れるのだった。

Photo_9  島田宿に盗人たちが集まる、という情報を入手した火盗改は早速出役する。宿場の小間物屋で妻への土産を買う鳥尾を発見した平蔵らは、その後を付け、粂八も宿場外れの百姓家へ現れた。丹兵衛は全員揃った手下に「いつもの様に、皆殺しだ! しっかり殺れよ!」と言った途端、機会を窺っていた粂八は匕首を抜き、丹兵衛に襲いかかったが、鳥尾に取り押さえられてしまった。

Photo_10  刹那、戸板を蹴破って入って来た平蔵は、粂八に「これが兇盗の末路だ、良く見ておけ!」と言い放つ。修羅場の末、“血頭の丹兵衛”一味捕縛に成功する。まさか、あの本格の盗賊の頭だった丹兵衛が……と苦悩する粂八に、平蔵は昔の罪を許し、以後火盗改方の密偵として働くようになる。

Photo_11 【つぶやき】 市川中車という役者は、忠臣蔵でも“吉良上野介”役であったり、悪役の良く似合う俳優である。月形龍之介、滝沢修らも吉良上野介をハマリ役としている。

【中村吉右衛門版】 蟹江敬三(小房の粂八) 日下武史(血頭の丹兵衛)  島田正吾 (簑火の喜之助)

【全作品】第1シリーズ(1969年10月7日~1970年12月29日、NET系 火曜21時台時代劇枠)

第1話 血頭の丹兵衛
第2話 四度目の女房
第3話 谷中いろは茶屋
第4話 蛇の眼
第5話 怪談さざ浪伝兵衛
第6話 本所・桜屋敷
第7話 暗剣白梅香
第8話 密偵(いぬ)
第9話 唖の十蔵
第10話 女掏摸(めんびき)お富
第11話 老盗の夢
第12話 妖盗葵小僧
第13話 埋蔵金千両
第14話 お雪の乳房
第15話 むかしの女
第16話 駿州宇津谷峠
第17話 熊五郎の顔
第18話 市松小僧始末
第19話 霧(なご)の七郎
第20話 山吹屋お勝
第21話 浅草御厩河岸
第22話 血闘
第23話 罪(つみ)
第24話 八丁堀の女
第25話 男の毒
第26話 井筒屋おもん
第27話 五年目の客
第28話 縄張り
第29話 麻布ねずみ坂
第30話 盗法秘伝
第31話 女の毒
第32話 まじめの新助
第33話 鬼坊主の花
第34話 むかしの男
第35話 情炎
第36話 白痴(こけ)
第37話 おみね徳次郎
第38話 敵(かたき)
第39話 猿(ましら)の銀次郎
第40話 かわうそ平内
第41話 白浪看板
第42話 恋文
第43話 うんぷてんぷ
第44話 おみよは見た
第45話 夜鷹殺し
第46話 報復(しかえし)
第47話 運の矢
第48話 密通
第49話 神田明神裏
第50話 かまいたち
第51話 艶婦の毒
第52話 乞食坊主
第53話 おせん
第54話 色と欲
第55話 深川千鳥橋
第56話 金太郎蕎麦
第57話 お菊と幸助
第58話 雨の湯豆腐
第59話 おっ母ァすまねえ
第60話 罠(わな)
第61話 あほうがらす
第62話 罪ほろぽし
第63話 女賊の恋
第64話 女の一念
第65話 おしろい猫

第2シリーズ(1971年10月7日~1972年3月30日、NET系 木曜22時台時代劇枠)

第1話 剣客
第2話 猫じゃらしの女
第3話 兇族
第4話 狐火(前篇)
第5話 狐火(後篇)
第6話 おしげ
第7話 夜狐
第8話 兇剣(前編)
第9話 兇剣(後編)
第10話 隠居金七百両
第11話 女賊
第12話 鈍牛
第13話 雨乞い庄右衛門
第14話 平松屋おみつ
第15話 下段の剣
第16話 掻掘のおけい
第17話 のっそり医者
第18話 情事
第19話 刃傷以后
第20話 裏道の男たち
第21話 あいびき
第22話 殺しの掟
第23話 泥鰌の和助始末
第24話 大川の隠居
第25話 礼金二百両
第26話 はさみ撃ち

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